スタジオブロスでは、2020年ごろからクラウド利用の推進を進めています。
しかしながらクラウドを活用しているスタジオさんが多くはないこともまた事実です。
「わざわざ使う理由が分からない」「どんないいことがあるの?」という疑問をお持ちの方のために、「3DCGスタジオがクラウドを使うことのメリット」についてお話していこうと思います。
3DCGスタジオがクラウドを使うことのメリット
私たちがクラウドを使うメリットは、大きく分けると以下の3つに分かれると考えています。
それぞれどういうことなのか、ひとつずつ追って説明してきましょう。
ワークステーションとして使う
クラウドにワークステーションを用意すれば以下の問題を解決できます。
- メンテナンスの人件費
- 高いイニシャルコスト
- 場所の制限
- マシンスペックの制限
- マシン数の増減
はじめに管理側の面から見てみましょう。
まず大きく解決できるのはメンテナンス人件費を大きく圧縮できることです。
クラウドにまとめてしまう事で、ワークステーションを一元管理ができ、今まで煩雑だった管理コストをぐっと圧縮できます。
クラウド環境は立ち上げるために初期手数料は不要ですので、高スペックマシンを購入するようなイニシャルコストもかかりませんし、追加・削除も自由なのでプロジェクトごとにスタッフが増減しても手軽に対応ができます。
また、クラウドワークステーションは制作スタジオだけではなく、学校などの教育機関にもお勧めです。定期的にマシンを買い替えるコストを減らすことができ、無駄なく予算を活用することも可能になります。
マシンの性能アップはクラウドベンダーが年々出してくれる最新のインスタンスに乗り換えるだけで完了してしまうので、オペレーションの手間も減らしていくことができます。
次に使う側の目線から見てみます。
クラウドに制作環境を作成すれば、インターネットがあればいつでもどこからでも制作環境にアクセスができます。しかも、そのバーチャルマシンにアクセスするためのマシンは高スペックである必要はありません。
つまり、低スペックなマシンで、高スペックな環境にアクセスができるというわけです!
しかしリモートデスクトップとなると「遅延や解像度に不安がある・・」と思われるかもしれませんが、AWSが提供している「NICE DCV」(https://aws.amazon.com/jp/hpc/dcv/)を使えば、ほとんどレイテンシを感じることなく操作できますし、4Kのデュアルディスプレイにも対応するので制作環境としては十分な環境を用意できます。
実際社内ではしばらくNICE DCVを使ってリモートデスクトップを使っていると「どの画面がローカル環境か分からなくなる」という声もよく聞こえてきます。
それ以外でも、HPの「HP Anyware」などを使うことでレイテンシの少ないリモートデスクトップ環境をつくることも可能です。
ストレージとして使う
クラウドにストレージを用意すれば、以下の問題を解決できます
- 容量不足
- コラボレーション
CG制作を取り巻く問題に ストレージ容量不足があります。CGアセットは容量が大きく、すぐにマシンやストレージサーバの容量を圧迫してしまいます。
過去のプロジェクトデータをとっておくと、どんどん容量が無くなってしまって、何を消すか・移動させるか頭を悩ませることになります。
そういった過去のアーカイブデータをクラウドベンダーの提供するストレージサービスに格納してしまえば、容量は無制限で使えるので残り容量を心配する必要はありません。
また、AWSが提供しているS3にはバージョン管理機能も付いているので、簡易的なプロジェクトストレージとしても使うこともできます。
バージョン管理ツールのPerforce(HelixCore)をクラウドに展開することで、進行プロジェクトの管理に使うことができます。
クラウド上にあるので、インターネット経由でPerforceにアクセス可能なので遠隔の人ともコラボレーションも可能になり、複数会社での制作時にも力を発揮します。
レンダリングリソースとして使う
クラウドでレンダリングをすることで、以下の問題を解決できます
- プリレンダリングのためのレンダリングリソース不足
- バーチャルリアリティやバーチャルプロダクションのレンダリングマシンの調達
プリレンダリングを分散レンダリングするときに使う定番のアプリケーションとして「Deadline」があります。このDeadlineを開発しているThinkbox Software社は2017年に米国Amazonに買収されました。
このDeadlineを使えば、ローカルネットワーク内にあるマシンを使って分散レンダリングが可能になります。また、ローカルマシンだけではなくて、クラウドのバーチャルマシンもレンダリングリソースとして使用することも可能です。必要な時に、必要なだけリソースを追加してレンダリングにかかる時間を効率化することができます。
今年には、AWS Deadline Cloud(https://aws.amazon.com/jp/deadline-cloud/)もリリースされ、さらに使いやすくなりました。
コストはどのくらい?
AWSで実行する場合を例にすると、以下のようになります。
ワークステーションを実行する場合
Amazon EC2 で、東京リージョン、g4dn.4xlargeで作成する場合、1時間当たり2.361米ドルで利用できます。
g4dn.4xlargeは、Unreal Engine 5 を問題なく動かせるレベルのGPUスペックを持っています。
もっと快適な環境が必要な場合は g5.4xlarge を採用することもできます。こちらは1時間当たり3.09128米ドルです。
ストレージに保管する場合
Amazon S3で、東京リージョン、Standardで100GB保管する場合。1か月あたりにかかる金額は2.5米ドルで利用できます。※ダウンロードには別途料金がかかります(1GBあたり0.114米ドル)
レンダリングに利用する場合
各種VR・VPに使う場合は、ワークステーションと同じものを使うので1時間当たり2.361米ドル~3.09128米ドルとなります。
Deadlineを利用する場合
インスタンスによりますが、大体はCPUを使ったインスタンスを使用されることが多いと思います。
例えば、CPU性能の高い「c7iシリーズ」をLinuxで使うならば、バーチャルCPU数は、2vcpuから192vcpuまで選ぶことができます。価格はスポットインスタンスを使えば、約0.18米ドル~約4.02米ドルとなります。
詳細な価格は以下の料金表をご確認ください。
料金 - Amazon EC2 スポットインスタンス - Amazon EC2 | AWS
Cloud Render Management – AWS Deadline Cloud Pricing – AWS
まとめ
3DCG制作におけるクラウド活用のメリット、伝わりましたでしょうか?
クラウドを使うことで、制作の効率を高めてゆくことが可能です。
スタジオブロスでは、各種制作環境のクラウド化に関するご相談も承っております。気になった方は是非以下からスタジオブロスにお問い合わせください。