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バーチャルプロダクションとカラーマネジメント:イントロダクション

インカメラVFXカラーマネジメント

今回からインカメラVFXカラーマネジメントを手っ取り早くやってしまおう!をテーマに「撮影現場でLEDウォールを使用した際のカラーキャリブレーション」に焦点を当てて連載をしていきます。インカメラVFXカラーマネジメントを実行するためにわざわざ「色に詳しい人材」に来てもらい作業する必要はないのでご安心ください。

まず代表的なソリューションをご紹介します。

代表的な2つのソリューション

カラーマネジメント・ソリューションには、代表的なものが2つあります。

  • Virtual Production Tool Set
  • OpenVPCal

Virtual Production Tool Set

1つめは、カメラ、LEDディスプレイを製造販売するメーカーであるソニー株式会社が開発したVirtual Production Tool Setの紹介です。

現在、Unreal Engine 5.2/5.3に対応しており、ソニー製デジタルシネマカメラの
「VENICE」、「VENICE 2」をお使いの方はすぐにご利用いただけます。(2024年10月10日現在ソニー(株)公式サイトでColor Calibrator V1.0.0.10200, Camera and Display Plugin V1.0.1 for UE 5.2, Camera and Display Plugin V1.0.2 for UE 5.3 を配布中)

このツールにはカラーマネジメント機能以外にも、Unreal Engine内に配置しているCine Camera Actorのパラメーターを実際に使っている「VENICE」と同期するVirtual VENICEやLEDの撮影中に映り込んでしまうモアレを事前のV-Camリハ時に警告するモアレアラートなど、VP撮影のトラブルを防止する便利な機能が実装されています。

今回の連載では、カラーマネジメントに関連する機能について取り上げていきます。

www.sony.jp

OpenVPCal

OpenVPCalは、動画配信プラットフォームとして世界的シェアを誇るNetflixと、Orca Studioが協力して開発したオープンソースキャリブレーションツールです。

大手OTT(Over-the-Top media service:オーバー・ザ・トップ・メディアサービス)であるNetflixが制作するコンテンツのために、撮影に使用されるあらゆるカメラのカラーマネジメントに対応するために開発されたので、前述のVirtual Production Tool Setがソニー製デジタルシネマカメラVENICEシリーズ専用(2024年冬に提供予定のVirtual Production Tool Setの最新バージョンでは、ソニー製のカメラ対応機種が増える予定)のキャリブレーターであることに対して、汎用的なカラーキャリブレーションツールであるという点が大きな違いです。

github.com

The Creation of OpenVPCal - Adrian Pueyo

 

キャリブレーションを利用したカラーマネジメント

まず、Virtual Production Tool Setを使用したカラーマネジメントによるキャリブレーション前後の測定結果を例にその違いを見ていきましょう。

モニターによっては色の差が見えづらいかもしれませんが、同じ位置にある各カラーパッチを比較する事で色の誤差を確認できます。

カラーパッチ : 中央から左側がTarget色、右側がLEDを撮影した再撮Target色
左右の色データが近似すればするほど色再現度は高い。

【図1】キャリブレーション前のカラーパッチ

【図2】キャリブレーション後のカラーパッチ

【図1】と【図2】を比較すると、明らかにキャリブレーション後のほうが、Targetカラーパッチと再撮影後のカラーパッチの色差が少なくなっているのがおわかりになる思います。

Virtual Production Tool Setを使用したカラーキャリブレーションを行う場合、Unreal Engineの事前知識とSwitchboard、Multiuserの知識が必要になります。

本連載ではこれらの知識についても取り上げながら、使い方をわかりやすく紹介していきますのでご安心ください。

連載について

連載の前半では、Virtual Production Tool Setの機能について解説します。

「VENICE」や「VENICE 2」などの対応撮影機材をお持ちでない方も、この連載を読むことで、LEDウォールでインカメラVFXを使用する方法や、nDisplay、SwitchbordやMultiuserなどの基本知識がしっかりと身に付きます。今よりもさらに知識を深めたい方にはぜひお読みいただけたらと思います。

後半は、OpenVPCalを使った実際のキャリブレーションプロセスを解説します。

本連載ではOpenVPCalを公式にサポートしているLive FX Studioを使用して、手軽にキャリブレーションを行ないます。

すべての連載を読み終わる頃には、必ずバーチャルプロダクションのカラーマネジメントを簡単に扱えるようになり、LEDウォールを活用しながらあなたが思い描くイメージ通りの映像を撮影することができるようになるはずです。

それでは最後までお付き合いください。

 

次回は「カラーキャリブレーションを行うための事前知識」です。お楽しみに!