よーし、クラウドを使い始めてみるぞ!と思ったけど、「クラウドベンダーって色々あるけど、どこを使うと良いの?」という疑問が出てきます。
スタジオブロスはAmazon Web Service(以下AWS)を主に使っています。それはなぜなのか、理由を添えながら解説していきます。
どのクラウドベンダーを使うか?
代表的なクラウドベンダーは3つあります。
その他にも、最近伸びてきたOracle Cloud Infrastructure(Oracle)や、国内だと「さくらのクラウド」もありますね。
先述しましたが、スタジオブロスではAWSを主に使っています。その理由は以下です
それぞれについて詳しく掘り下げていきます。
Deadlineが使える
これはそのままの理由ですが、AWSは分散レンダリングシステム「Deadline 」を持っており、プリレンダリングの絵を出力する際、Deadlineは欠かせないソフトウェアです。
米国Amazonが開発元のThinkbox Software社を2017年に買収したことにより、Deadlineはローカルネットワークでの分散レンダリングだけではなく、クラウドを使ったレンダリングにも対応しています。これはどういうことかというと、AWSが用意しているデータセンターの膨大なリソースを、レンダリングに利用可能になるということです。
クラウドレンダリングは、Deadline単体で利用するにはハードルが高い面がありましたが、2024年に「Deadline Cloud」が発表され、利用のハードルが少し下がりました。
ちなみに、電子書籍でDeadlineの使い方を説明した本をこちらで販売しているので気になる方は是非。
Windows Serverが載ったGPUインスタンスを使う際、Azureと比較して安価に使える
意外な事なのですが、GPUが搭載されたWindows Serverを動かす際、Azureで動かすより、AWSの方が安く使えるのです。
AWSとAzureの同レベルのGPUインスタンスの性能を価格をまとめると以下のようになります。
Azure NVadsA10v5
サイズ | vCPU | メモリ:GiB | GPU パーティション | 1時間当たりの価格(米ドル) |
---|---|---|---|---|
Standard_NV6ads_A10_v5 | 6 | 55 | 1/6 | 0.934 |
Standard_NV12ads_A10_v5 | 12 | 110 | 1/3 | 1.869 |
Standard_NV18ads_A10_v5 | 18 | 220 | 1/2 | 3.148 |
Standard_NV36ads_A10_v5 | 36 | 440 | 1 | 8.21 |
Standard_NV36adms_A10_v5 | 36 | 880 | 1 | 6.296 |
Standard_NV72ads_A10_v5 | 72 | 880 | 2 | 12.766 |
AWS EC2 G5
サイズ | vCPU | メモリ:GiB | GPU | 1時間当たりの価格(米ドル) |
---|---|---|---|---|
g5.xlarge | 4 | 4 | 1 | 1.643 |
g5.2xlarge | 8 | 8 | 1 | 2.12576 |
g5.4xlarge | 16 | 16 | 1 | 3.09128 |
g5.8xlarge | 32 | 32 | 1 | 5.02233 |
g5.16xlarge | 64 | 64 | 1 | 8.88442 |
g5.12xlarge | 48 | 48 | 4 | 10.43409 |
g5.24xlarge | 96 | 96 | 4 | 16.22723 |
g5.48xlarge | 192 | 192 | 8 | 32.45446 |
注目すべきはAzureの「GPUパーティション」という部分で、最初から3つは「1/6」「1/3」「1/2」となっているのが分かります。これはそのままの意味で、1GPUをそのパーティションの性能分しか使えないよということです。例えば「1/2」というのはGPUを1/2しか使えないことを指します。
対してAWSは安いプランでも1GPUが付いてきます。
スタジオブロスではg5インスタンスの場合はg5.4xlargeを使いますが、それと同等のスペックを求めるとなるとAzureの「Standard_NV36ads_A10_v5」になります。価格はAWSは約3.1米ドルに対してAzureは8.21米ドル。その差は2.6倍以上です。
値段で比較するとAzureの場合は「Standard_NV18ads_A10_v5」が3.148米ドルでちょうどよさそうですが、GPUは1/2になってしまうので、この場合でもAWSのg5.4xlargeの方がコストパフォーマンスに優れています。
ちなみにですが、1段下の性能のAWSのg4dnインスタンスとAzureのNCasT4_v3はほぼ同じ性能を持っていますが、こちらは価格性能ともに全く同じです。
この場合AzureとAWSどっちを選ぶと良いのだろう・・となりますが、ワークステーションとして使うことを考えると、次の項目が決め手になります。
NICE DCVが無料で使える
スタジオブロスでは主にEC2サーバをワークステーションとして使うことが多いのですが、その際に重要になるのが「何を使ってリモートデスクトップをつなぐか」です。
特に何も考えなければ、Windows標準のリモートデスクトップアプリケーションを使うかと思いますが、遅延が気になって思うように作業ができないという経験も皆さんにあるかと思います。
AWSはNICE DCVという、リモートデスクトップアプリケーションを提供しており、これがかなりの低遅延で動作します。
私の経験では4~5ミリ秒くらいの遅延で動作し、そもそも遅延しているという感覚すら感じません。しかもAWS内で使う場合に限り無料で使えるというのも良いところです。
すでに多くのUSB入力デバイスに対応していて、WACOM社が開発中のWacom Bridgeというツールを使うことで、液晶タブレットにも対応しています。
まとめ
以上の理由から、現状3DCGスタジオではクラウドベンダーはAWSを選択するのが良いと思います。
もちろん、AWSしか使えないというわけではありません。AzureでもGoogle Cloudにも使い方があると思います。
クラウドをこんな使い方をしたいんだけど、どうしたらいい?と言ったご相談もスタジオブロスでは承っておりますので、以下からお気軽にお問い合わせください!